設立趣旨

一般社団法人 須磨里海の会設立趣旨

設 立 趣 意 書

 本来、人間社会は大いなる自然のなかで生まれ育ち、その穏やかで豊かな環境に依存してきました。しかし、文明の高度化と経済活動の拡大により生じた環境問題を、地域的には克服するように見えたものの、現在は地球規模に及ぶ重大な環境変化に拡大し、人類の生存を脅かす段階に近づいていると危惧されています。私たちが暮らす須磨の海でさえ、水温の上昇、気象の激甚化、森川海のつながりと浅場の減少、流れの変化、化学物質やプラスチック製品の流入蓄積などさまざまな環境変化を受け、生物の多様性や漁業生産量の低下を招き、自然再生と減少した漁獲量の回復が課題となっています。

2010年から、須磨海浜水族園が地域の自然環境の保全と課題解決のために、地元漁業者の協力のもと、減少したアサリ再生のための調査研究に着手しました。2016年、砂浜が遠浅化されたのを機に、漁業者・市民ボランティア・行政が協働する須磨里海の会を発足させました。その間にも、須磨海岸は、美しく安全で安心して集える海岸として整備され、様々なイベントやスポーツで賑わうとともに、環境教育を実践する国際ブルーフラッグ認証海岸となりました。漁業は海苔養殖をはじめ、シラスイワシ・イカナゴ・カレイ類・マダコに代表される漁業活動が行われ、神戸市民は新鮮で安全な水産物の供給に恵まれています。漁業者の水産物環境保全の意識が高まり、漁業と観光が共生する特異的な海岸として、将来において長く漁業活動が続くことが望まれています。

私たちは、里海活動とは地域の人々が生活するうえで海とかかわり、創意工夫しながら魚介類などの生物の生産性を増やし、穏やかな生活環境と安らかな気持ちを得るといった恩恵を享受する活動と考えています。現在の海の環境は、突然変化したものではありません。人間社会が発展する中で自然とのかかわり方が変化し、長い年月をかけて少しずつ変わってきた結果と考えています。

須磨海岸が位置する大阪湾には、大洋と異なる特有の内湾環境があり、かつてはさまざまな生物が満ちあふれた豊かな海でした。生物が減少したといっても、ほとんどの生物種はまだどこかで生息しています。須磨海岸とその周辺の海を豊かにする生態系や生物種の再生と保全への取り組みを通じて、人々の海への関心を高め、人々を海に誘い、漁業が盛んな恵み豊かな里海を次代に継承することを、一般社団法人 須磨里海の会の設立の趣旨とします。

2024年 3月 13日

                   一般社団法人 須磨里海の会